株式はインフレに強いとされる。端的に理由を言えば、「値上がりしたモノ・サービスを消費者に買ってもらえれば、業績そして株価があがる」となる。すなわち、値上げしても選ばれるモノ・サービスを提供している企業(価格転嫁を受容される企業)は強く、選ばれない企業は対象外ということになり、株式全般が強いわけではないこともわかる。では値上がりが如実に顕在化してくる今後、インフレ対策として強い株を買っておけば本当に心配無用なのか?
暴落は避けられない
事の発端はリーマンショックまで遡る…またはそれ以前か。景気対策としてバラ撒かれたマネーだが、消費を刺激するという思惑とはやや違い、株や不動産など資産性のあるものに流れ込んだ。世界を震撼させた新型コロナウイルスは、肥大化した金融市場を冷やすのには十分以上の出来事だったが、世界は更なるバラ撒きの正当性を得て、むしろ肥大体質は悪化した。ようやく今、インフレ退治の名目で主要各国が出口を模索し引き締めを始めたが、我が国のみが未だ抑え込みに足掻いている。後回しのツケは異常なほどの大きさとなっているのに。
暴落は表面的には是が非でも避けたい大ごとだが、見方を変えれば健全化への一歩とも考えられる。延命措置を続けるほどに肉体は悪化している状態だ。荒療治だが、一旦リセットして再起した方が色々と組み直しもできよう。そう、暴落は避けられない。今こそゾンビを一掃し、経済・社会を立て直す方にエネルギーを割くべきだろう。
今、取り得る投資戦略は
金利が暴走したら日銀含め数多の企業が吹き飛ぶだろう。企業が今取り得る策は体質改善だ。借入依存を落とし、収益の柱を分散させて時代変化への耐性をつけるべきだ。無論、消費者に選ばれ続けるモノ・サービスを提供できることが必須。インフレ下でもしっかりと生き残れる手を打つべきだ。
しかし、いかに強い企業であろうとも暴落の影響は避けられないだろう。企業価値云々以前に、マーケットからリスクマネーが引き揚げられたら玉も石も構わず全て下がる。これまでのインデックス(ETF含む)投資偏重のツケがここで出る。無駄に全部が上昇したこれまでに対し、無駄に全部が下落することが、これから始まる。だが、リスクマネーは永遠に退避姿勢を貫かない。リスクテイクできる人から動き始めるだろう。その時にマネーが向かう先は選び抜かれた強い企業のはずだ。そして率先してリスクテイクをするのは本物の長期投資家だ。
今、取り得る投資戦略は二つ。強い企業の選定を終え、大きく下がった時にリスクを抱え込むこと。いや、その際にはあらゆるネガティブ要因が取り除かれた状態のため、リスクとは言えないかもしれない。次に、個人での対応が難しいなら、それを成し遂げてくれるアクティブファンドを選ぶこと。ファンドであれば企業選定も投資タイミングも不要だ。つみたてを継続しておけば、相応しい企業そしてタイミングを計るのはファンドの仕事だ。
暴落はいつ来るのか? それは誰にも分からないが、まずは来春に注目だ。それまで恐怖と共に布団に隠れるのではなく、さぁ、今こそ戦う準備を始めよう。
【2022.8.16記】代表取締役社長 澤上 龍