さわかみファンドは、“ 世の中をおもしろくしていこう ”という当社の経営理念を果たすための重要な船だ。さわかみファンドを通じて多くの日本人がお金の不安から解放され、堂々と人生を歩んでいけば自ずと社会は明るく元気になるだろう。子どもたちが憧れ、真似をしたくなる大人が増えれば、次世代以降の日本の憂いも薄まっていくだろう。
しかし、ただ資産を増やせばよいわけではない。持続性・再現性ある増やし方を見出さなければならない。企業は、社会つまり我々生活者による必要性の高まりを受けて成長する。その企業成長、ひいては社会成長を応援した長期投資家に報いるべくリターンが戻ってくる。正確にはリターンが皆に分配される。値動きを予想するよりよほどシンプルで、楽しく、再現性があるのが長期投資だ。
これからの10年
金融危機後の景気浮揚を狙い、そして未曽有のコロナ禍を乗り切らんと大量のマネーがばら撒かれた。その一部が資産性のある商品に向かい価格を押し上げた。傍らで天文学的な規模の借金が生まれた。それがここまでの10年だ。しかし緩和策はいつまでも続かない。必ず引き締めに向かう…その足音はすでに聞こえ始めている。
これからの10年は大波乱から始まるだろう。貯蓄から投資へのスローガンによって、NISA などの制度によって大衆に開かれ始めた市場は想像もしない大打撃を喰らう。その時、意気揚々とまたは恐る恐る投資を始めた初心者層はどう思うか。やはり投資は怖いものだとの印象を強め、投資文化は10年後退するかもしれない。
それでも我々の生活は続く。贅沢は控えても、必要な消費が消えることはない。コロナによって生活変容が定着しつつあるが、根本的に人が生きる上で必要なものはあまり変わらない。そういったモノ・サービスを提供してくれるのは常に企業だ。株式市場は崩れようとも、我々の生活を支える企業は生き残る。むしろインデックスや ETF のような市場全体買いが薄れ、選ばれし企業の台頭が始まる。
さて、そういった状況で誰が必要とすべき企業に寄り沿うのか。誰が最初にリスクをとり、未来への歩みを始めるのか。求められるのは投機ではない、投資だ。いよいよ長期投資家の出番が来る。
船をどう磨いていくか
さわかみファンドは日本における長期投資のパイオニアだ。多くのファンド仲間と共にある。これからの10年を寄り添う企業の調査もしっかり進んでいる。あとは時を待つのみだ。
次ページの “20有余年を振り返って” でも触れているが、さわかみファンドの前半10年はユニークかつオンリーワンという存在と同時に、多くの方に期待いただけるような “ワクワクするアウトプット” があった。後半10年はそれが影を潜め、説明しやすい運用論が表に出た。その結果がファンド仲間の伸び悩みや成績鈍化に繋がった。投資環境がそうさせた面もあるが、それを言い訳にせず、未来は変えていかなければならない。
我々はいつの時代も企業ありきの投資運用をする。戦略論に固執するのではなく、皆とワクワクしながら変わり得る未来を語る。企業に寄り沿い社会づくりに励む。徹底的な企業調査、大胆なキャッシュコントロール、将来の納得を現在の不納得で行動する覚悟、なによりファンド仲間と共に未来を創造していくことを決して疎かにしない。そして再現性ある投資リターンを着実に積み上げていく。説明責任ではなく、結果責任を腹落ちさせた上で全社に勢いを取り戻す。
最後に、金融を超えた存在になることが必然と捉え、WEB 取引サービス刷新や付随する新サービス導入など、我々は今後も挑戦を続けていく。10年後、ファンド仲間と共に笑っていられるように。
【2022.9.22記】代表取締役社長 澤上 龍