DC制度とは?
私たちは、さわかみファンドの運用・販売を行う金融商品取引業者ですが、同時に個人型確定拠出年金(iDeCo)や企業型確定拠出年金(企業型DC)の運営を担う確定拠出年金(DC)の運営管理機関でもあります。つまり、当社には2つの顔があるのです。
DC制度とは個人年金や企業年金をつくるための制度です。働いている現役時に積立を行い、原則60歳になるまでは受け取ることができない制度であり、長期志向のお金が対象と言えます。また拠出時、運用時、受取時といった入口から出口まで税制優遇が用意されており、通常の預金や投資よりも有利な条件で長期投資ができます。さらに、企業型DCは社会保険料を抑える効果もあり、コストを抑えながら従業員の福利厚生を充実させたいという経営者と、公的年金だけの老後準備に不安を抱いている従業員の双方にとって良い制度となっています。
なぜ普及していない
2022年3月現在、企業型DC導入事業所数は42,669事業所となっています。これは日本国内の民営事業所数約639万事業所のうち、約0.67%に当たります(DC導入事業所数は厚生労働省資料より、日本国内の民営事業所数は令和元年経済センサス基礎調査甲調査より)。なぜこの制度の普及率が1%以下に留まり、広まっていないのでしょうか。私は主に2つの原因があると思っています。
原因1:そもそも企業経営者がこの制度を知らない。
原因2:制度導入にかかる費用や担当者を設ける余裕がない。
制度を導入するためには厚生労働省へ申請し、承認を得る必要があります。承認申請に必要な労力や時間は、1事業所あたりそれほど大きく変わるものではありません。つまり従業員1,000名の企業も、10名の企業もそれほど大きく変わらないということになります。従って運営管理機関側から見れば、より多くの従業員を抱えている企業へのアプローチを優先的に進めたほうが手数料収入を増やせるということになります。その結果として、日本の屋台骨である中小零細企業の経営者へ情報が届いていない現状があります。
私たちの想い
しかし、大手企業のように自社での企業年金制度や退職金制度がない中小零細企業の方々にこそ、この制度を使って自分年金を準備する必要があるという思いから、私たちは制度導入に際しての従業員数に制限を設けず、1人法人からお受けしています。また導入コストを業界最安値水準で設定し、導入前の制度説明会を含むご相談、導入に必要な申請手続き、導入後の継続研修や変更手続き等をなるべくきめ細かく、お客さまへの負担を最小限にするようにサポートしています。
自分年金の必要性
年金2,000万円不足問題が話題となったように、私たちは公的年金だけでは安心・安定した老後生活を送ることができないかもしれません。ではどうすればいいのでしょうか? 国が公的年金制度を抜本的に変えてくれるのを待つべきでしょうか。いつになるか分からないものを待っていても、結局何もせずに老後を迎えてしまうことになってしまいます。だからこそ、今から自分年金をつくるしかありません。国に頼れない以上は、自助努力をするしかないと思っています。しかしながら、自分で年金をつくる必要性に気づいている現役世代がどれほどいるのでしょうか? 正直、DC普及率から見ても、私はそれほど多くはないという印象を持っています。高齢者の貧困問題が社会の中で取り上げられ、悲観的なニュースがより世間を騒がせるようになってから、徐々に日本の若者が老後生活に対して危機感を持つような気がします。しかし、自分年金づくりは一朝一夕にはできず、相当な期間が必要となります。始めるのが遅すぎたということがないように、私たちが早くから自分年金をつくる必要性を、世の中に訴える必要があると思っています。
当社にとってDC事業はすぐには利益にはつながりません。なかなか利益に繋がらないことを続ける意味はあるのだろうか、という声も聞こえてきそうです。しかし、私たちはDC事業を行っていることに誇りを持っています。この事業は国民の老後生活を豊かにすると同時に、現役世代にも安心感を与え、より自立して堂々と生きていく国民を日本社会に増やす可能性を秘めているからです。
ファンド仲間の皆さまには、DC運営管理機関という当社のもう一つの顔を改めてご認識いただき、ご自身やまわりの方々の老後および現役生活のための資産形成に当社を活用していただきたいと思っております。繰り返しにはなりますが、長生きがリスクとなり、老後の生活の安心・安定を公的年金だけには頼れなくなっている中、特に自営業者や自社で退職金制度や企業年金制度を持っていない中小零細企業の方々にこそ、ぜひ一歩を踏み出していただきたいです。
【執筆者:新田 智洋(前確定拠出年金部所属、2023年1月より直販部)】