昨年の特別企画ではファンド設定来の運用状況20有余年を振り返りました。過去を振り返りつつ未来に繋げていく…加えて、皆さまに長寿ファンドに育んでいただいた“さわかみファンド”の今後について必要だと思うことを述べた次第です。あれから一年、私たちは確実に前進いたしました。
①運用戦略よりも“必要な企業を応援する”王道を貫く
~長期投資のリズムを大事に
再現性ある長期投資を実現するために、常に企業ありきの投資スタイルを貫く。説明のための運用ではなく、企業の成長が社会をつくるという本来あるべき要素を大切にする。将来の納得を現在の不納得で果敢に挑む覚悟を持ち、長期投資のリズムに沿って堂々と行動する。
②ファンド仲間の皆さまからの
信頼に“期待”を乗せていく
~ワクワクするようなアウトプット
変わり得る未来を皆さまと共にワクワクしながら期待を込めて投資を行う。決してファンド仲間を置いてきぼりにせず、むしろ多くの皆さまが日本や社会に期待を抱き投資をする文化を醸成する。
おかげさまで、本年8月をもって満24歳となったさわかみファンド。今回の特別企画では一年間の『ファンド仲間動向』について振り返りたいと思います。実は、皆さまの行動が運用成績に与える影響は小さくありません。むしろ皆さまとの二人三脚こそが素晴らしい運用成績を生み出す秘訣と言った方が正しいでしょう。ファンドの決算期とは少しずれますが、昨年9月1日から本年8月31日までの月単位の動向について記していきます。
最大の目標は、100万人(総人口の1%)超の仲間と共に日本をおもしろくしていくこと
私たちが最も気にかけている指標はズバリ、ファンド仲間数です。下のグラフ1をご覧ください。この一年間のファンド仲間数(口座数)の推移を示しています。
ファンド仲間の皆さまはこの一年間で574名増の118,215名となりました。折れ線グラフが示すように順調な右肩上がりを見せております。棒グラフは口座開設・閉鎖の推移で、一年間の総数では新しく口座を開かれた仲間が1,792名、口座を閉じられた方が1,218名いらっしゃった計算です。
新規口座数の増加の背景には広告効果があると考えております。まだ長期投資に触れたことのない、特に若年層を中心にさわかみファンドの認知が上がりました。他方で口座閉鎖をされた方の特徴は、既に長く保有いただいた高齢の方が多い印象です。長期投資のリターンを享受し“使うステージ”に入られる方を補うかたちで若い仲間が増えた…ある意味で戦略的に間違っていないと言えるでしょう。
懸念があるとすれば、若く新しい仲間たちは相場暴落を知らないということ。さわかみファンドの強みは暴落時の応援買いです。「社会に必要な企業を応援するぞ!」に呼応いただけるファンド仲間の皆さまが多いことが運用成績をプラスに押し上げるのです。今後、大きな市場調整などが到来した際、同じ想いで「待ってました」とばかり行動できるかどうか、その二人三脚ぶりが問われます。
それを予測するにあたり、どのような経路で新規口座開設がなされたのか、そして開設時の状況を探っていきます。
グラフ2をご覧ください。棒グラフが口座開設前の申込数です。WEB申込数とはWEB上にて口座開設にアクセスした数、資料請求数はその名の通り一旦資料をお取り寄せになった数です。2023年1月よりWEB申込数が大きく増えているのは、上述の通り広告宣伝効果によるものです。
注目すべきは「お申し込みに対する実際の口座開設率」です。WEB経由の口座開設率は60~80%という高い数値を出しています。当然の結果ではあるのですが、WEB上でお申込みをいただきそのままの流れで口座開設まで至ったケース、つまり、間を空けずにスムーズに進んだことによります。他方で資料請求のケースはどうでしょうか。
資料をご請求される方は、さわかみファンドをまずは学んでみたいという方、すぐにでも始めたいという方が混在します。もちろん、興味はあったが資料を置きっぱなしにしているうちに忘れてしまったという方もおられるでしょう。その結果、開設率は30~50%とWEB経由の数値には届きません。ただし、一般的にWEB申込は“すぐにやる気”で来られている状態であるため、これらの数値のばらつきに違和感はありません。
次にグラフ3をご覧ください。こちらは口座開設時に『定期定額購入サービス(つみたて投資)』をお申込みされた方の割合です。全体平均は40%前後の方が口座開設と同時につみたて投資を始めていることが分かります。ただし経路を見ると、なんと資料請求を経てからの口座開設者のつみたて投資割合が60%前後と圧倒的で、WEB経由は30~40%に留まります。資料をご覧いただき、じっくりと検討された方がつみたて投資の効用を腹落ちさせたのでしょうか? いや、WEB口座開設は「取り急ぎ口座だけ開設したい」という方が多いのかもしれません。加えて考えるべきは、WEBシステムの使い勝手です。ここがネックとなってつみたて投資割合を押し下げているなら、すぐにでも改善すべき当社の課題です。
以上が「さわかみファンドを始める/辞める」と「始めるにあたっての経路と始め方」でした。私たちにとってみれば全ての皆さまが大切なファンド仲間の一員なのは間違いありません。しかしながら、これからの対話方法などを模索するにあたっての重要指標と認識し、引き続き細かく見ていく必要があると考えています。
「安く買って高く売る」が根付いたファンド~まさに長期投資のリズム
次に売買動向について見ていきましょう。下のグラフ4の通り、さわかみファンドの基準価額の動向と逆相関するように、ファンド仲間の皆さまの購入・解約の差し引き(資金流出入)が動いているのが分かります。つまり、基準価額が下がるとお買付けが増え、基準価額の上昇に伴って引き出し(解約)が増えています。顕著にあらわれたのが2023年5月と6月です。日本株の見直しムードで基準価額がスッと上がり始めると同時に引き出しが大きく増えました。しかし7月以降にかけてその引き出しが減り、月次単位で純流入となった次第です。これには毎月安定的に入ってくる10億円のつみたて投資の影響も大きいでしょう。なお、スポット購入も基準価額が下がると増える傾向が見られます。かつて相場が大きく下がった時に、このスポット買いが大きく増えた歴史があるのがさわかみファンドの特徴、そして強みです。
売買動向をもう少し細かく見ていきます。グラフ5をグラフ4と重ねてご覧ください。基準価額が上昇すると引き出しが増える傾向があると述べましたが、それは件数・金額ともに上がっていることが分かります。なお、皆さまのつみたて投資の平均額は2023年8月時点で3万円弱となっています。
口数減少の傾向は危険サインという誤解
最後に口数動向です。口数とはファンド仲間の皆さまの持ち分です。口数が増えていれば全体のお買付けが多く、減っていれば引き出しが多いという大枠の考え方は間違っていないのですが、単に口数が増えているから安心、減っていたら危険ということではありません。
グラフ6(右ページ上)の通り、基準価額が上がると口数が減っていることが分かります。これまで見てきた通り、上昇局面での引き出し(利益確定)が増えるため、口数が減るのは当然の結果となります。ただし安直にそれだけと捉えてよいのでしょうか。
例えば、基準価額が30,000円の時に100万円お買い付けたとしましょう。すると、口数は333,334口増えることになります(基準価額30,000円=1口3円)。これが設定当初の基準価額10,000円だったら、100万円のお買い付けで1,000,000口増えることになるのはご承知の通り。つまり、高い時は買える口数が減り、基準価額が低い時には口数も多くなるのです。つみたて投資の考え方である“ドルコスト平均法”は、「基準価額の低い時もコツコツつみたて投資をしておけば、口数がたくさん持てるので上昇局面でハッピー」と言われる所以です。ファンド仲間の皆さまは金額をベースにお取引されますので、あまり口数を気にされない方もいらっしゃいますが、実際にはグラフ4、5で見たような売買動向によって口数は大きく変わってきます。
つまり、基準価額が低い時のスポット購入・つみたて投資は口数を大きく増やすことに繋がり、逆に昨今のような基準価額が3万円を超える状況では、仮に同額のお買い付けをいただいても口数の伸びが鈍化してしまうのです。無論、お引き出しの際は、基準価額が高いほど口数は減りにくくなりますが、つみたて投資の月々の額(平均3万円弱)よりも、一回で引き出す額(平均100万円前後)の方が大きくなるのは自明の理です。
基準価額の高低だけで口数増減の理由は一概には説明できませんが、口数を安定上昇させる点だけで考えれば、相場下落時(基準価額が下がっている時)に大きく買っていただき、上昇時に引き出して使っていただく…さわかみファンドが企業の株を安値で買い、高値で現金化して次の安値でまた買いにいく、というリズムと同じになれば良いわけです。WEB経由での口座開設の方が多く、かつ、つみたて投資を半数以上がされていない状況を見るに、相場が大きく下がった時の買いチャンスを待っているのかもしれません。
他方で、つみたて投資分の件数・金額が多いことが口数増減のスピード感を低下させてしまっているのも事実です。しかしながら、皆さまのファンド購入方法としてつみたて投資は最適であり、大きく増えたら引き出していただくことも理想ですので、結果論を言うなら、あまり口数のみに捉われてはミスリーディングが起こってしまうということです。強烈な運用成績を出そうとするなら別ですが、ファンド全体の安定性を考慮するなら、引き出して使うステージの方以上に増やしていきたい方(つみたて投資)の割合を大きくする必要があることは間違いありませんが(結果、口数も増える)。日本の年金事情と同じ状況です。
今後に向けて
以上の通り、この一年間のファンド仲間の皆さまの口座動向、売買動向を見てきました。私たちの目指すべきところは、一人でも多くの方の財産形成のお手伝いをさせていただくことです。自立したカッコイイ大人が増えることが、子供たちの道しるべとなると考えております。
そしてそのような一人ひとりが集まって仲間となり、相手を応援・育むことを知る長期投資家集団となれば、日本はおもしろくなること間違いないでしょう。
私たちはそのためにも、暴落時にも果敢に応援できる長期投資の素晴らしさを広く伝え、仲間を多く増やしていきたいと考えております。生活に無理のない『つみたて投資』をコツコツ行いつつ、余裕がある方が『暴落時の応援スポット買い』を行っていただく。そして十分に利益を出された方が『利益の一部を引き出してカッコよく使っていただく』…そういった流れ、さわかみファンドとの付き合い方なども併せてお伝えしていく所存です。
私たち長期投資家の出番はすぐそこまでやってきています。今こそ、皆でワクワクしながら未来に投資をする、そういったことが叶う社会へのコミュニケーション;広告・対話の軸は『長期“応援”投資』の一本で訴えてまいります。
【代表取締役社長 澤上 龍】