先般実施されました運用報告会での発表内容についてご紹介致します。今回の運用報告では、(1) 基準価額は設定来高値を更新、(2) 金融株主導の相場環境、(3) 最高投資責任者(CIO)交代による運用面での変化の大きく3点についてお話致しました。
まず24期の結果についてご報告致します。さわかみファンドの基準価額は34,521円で終えました。期中では23年8月に35,751円、さらに9月には36,082円を記録しました。複利年率では5.3%になりました。口数や純資産額、株式評価総額、現金等は図のようになりました。
第24期の相場環境は引き続きバリュー株優勢の展開となりました。とくに世界的な金利上昇やインフレ、日本銀行の金融緩和政策に対する修正期待から、銀行や保険、その他金融といった業種の株価が上昇しました。さわかみファンドではファンド設定来、伝統的な銀行や保険、その他金融業への投資は行っておらず、値上がり益を享受することはできませんでした。もちろん日本でのインフレ率の高まりから金融緩和政策の変更、そして銀行株の大幅な上昇は想定内でしたが、それでもさわかみファンドとして現時点では銀行株に投資できないとCIOは結論付けております。ただしこれは現時点の見解であり、今後の状況次第では投資対象となる可能性はあります。
CIO交代による運用面での変更として、①現金比率の引き上げと②日本株中心の調査運用への回帰および外国株の選択と集中、が挙げられます。現金比率は第23期10.8%から第24期末時点で13.6%に引き上げられ、今後の株式市場における調整局面では積極的に買い付けていく方針です。そして外国株に関しては抜本的に選択と集中を進めました。下図の通り、外国株の新規組入は1社に留まるなか、6社を売り切りました。結果として外国株の組入数は、第23期22社から第24期17社になりました。一方で日本株の調査に注力し、新たに7社を新規で組み入れております。これら以外にも日本株のユニバースを拡充し、世界的な経済情勢や金融政策が転換していく中で企業努力によって長期的に企業価値を高めていけるであろう企業を厳選しております。
第25期は引き続き日本を含む世界の中央銀行の政策に左右される展開が続くと想定されます。国内の銀行業の強いモメンタムの継続も想定されますが、さわかみらしさを重視し、社会的課題を解決しながら長期的に企業価値を高めていける企業への投資を行っていきます。また運用ではポートフォリオ全体のバリュエーションや流動性を慎重に管理していきます。絶対リターン型のファンドとして中長期的に基準価額を更新し続けるとともに、いつ何時でもファンド仲間の皆さまの資金ニーズに応えていけるよう運営する所存です。
【運用調査部 ファンドマネージャー 坂本 琢磨】
今後の運用調査について
今後のさわかみファンドの運用調査について、
➊変わらない点、❷社会の要請、➌第25期の強化のポイントについてご説明します。
➊変わらない点
「広く、深く、遠く」と「推と論」の思考方法、三人四脚の価値観、長期投資のリズムは今後も堅持いたします。投資をすることで初めて体験できるワクワク感や、未来をともに切り開いていく面白さを皆さまと分かち合う点は変わりません。
➋社会の要請
2023年3月に内閣府より「知財・無形資産ガバナンスガイドライン Ver.2.0」が公表されました。アクティブ運用に期待されるアクションとして、「知財・無形資産情報を、企業の潜在的価値を把握するための重要な情報と捉え、より長期的な視点での銘柄選択に活用すること」とされています。
➌第25期の強化のポイントについて
企業の持つ潜在的な将来価値を知財・無形資産情報を通じて推測する能力をこれまで以上に強化します。さわかみ投信は創業時から、現在の財務の数字には表れにくい企業の将来価値を読み込む力を培ってきました。当社では「将来の納得、現在の不納得への投資」と表現します。そのために、企業リーダーの情熱や強烈な志、生産現場の持つ独特のノウハウ、研究開発の自由闊達な文化、そこから生まれる特許の質、顧客との強い信頼関係などを丁寧に観察してきました。これらの観察力や洞察力は難しいがゆえに属人的なものになりがちです。第25期はこのような能力を備えたアナリストを継続して輩出する仕組み作りを強化します。
そのために質の高い一次情報に継続的に触れる仕組みを構築します。一次情報とは、国内外をリードする研究者や地域未来牽引企業の経営者の皆さんとの真剣な議論から得られる実体経済の生の声です。
また、新進気鋭の若手研究者やスタートアップ経営者とのアイデア交換による世代間コミュニケーションから次世代の需要の洞察力も磨いていきます。厳しい言葉で言えば、知的な他流試合を継続して緊張感を保ち将来を見通す観察力や洞察力を鍛錬します。具体的な施策と目的は以下の通りです。
それぞれの進捗は適宜、月次レポートや本誌あるいはセミナー等でファンド仲間の皆さまにご紹介します。
【取締役最高投資責任者 兼 運用調査部長 黒島 光昭】