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バラ撒かれたマネーが過剰流動性を生み出し、実体経済から金融経済が切り離される。この流れは数十年も続いており、リーマン・ショック時の各国中央銀行が顕著で、金融の力で経済を支配することに憂いを感じなくなってしまったようだ。
 
経済の死を阻止するなど功を奏した点もあるが、景気浮揚という主目的とは別に金融市場が暴走し、株式や不動産といった資産の全面高を形成するに至った。
 
それが新型コロナウイルスの世界的蔓延で歯止めを失い、経済と金融の関係は完全に狂った。

 

長期運用の極意はアセット・アロケーション

景気低迷時(低金利時)に資金を株式に集中投下し、景気回復過程(金利上昇時)に保有株式を売り上がって徐々に現金化を行う。好景気(金利高騰時)を見て十分に価格下落した債券へ資金をシフトさせ、次なる景気悪化を待って債券を売り、資金を株式にシフトする。要は、景気サイクルに合わせてアセットクラスを切り替えていく…運用成績の8 ~ 9割はこのアセット・アロケーションで決まると言われている。
 
しかし金融市場の暴走により、昨今の相場では伝統的なアセット・アロケーションが効かなくなった。経済と金融の非連動性によって実体を置き去りにして資産価格が上がっているからだ。

 

金融市場の暴走は永遠には続かない

人が織りなす経済は時に行き過ぎ、必ずどこかで健全化を迎える。今後は景気やインフレ動向を見極めつつ抑制段階に入るだろう。膨張したマネーの収縮、つまりこれまでの逆回転が起こるのだ。マネーの収縮は我々に一体何をもたらすだろうか?

第一に、金利上昇により“ 前借り消費” が期待できなくなる。近く、クレジット・ローン依存で消費を維持する米国経済が躓くかもしれない。日本でも住宅ローンに大きな影響を与えるはずだ。また、金利上昇は債券価格を下へ追いやる。債券保有者である銀行のバランスシート(BS)が悪化し、預金を通じて銀行の債権者となっている個人等への返済(引き出し)にも不安が生じ、景気への直接的なダメージとなる。一方で金利上昇は銀行業等の金利ビジネスに好転をもたらすが、フロー(損益/ PL)の好転は一時的、それ以上にストック(BS)への影響の方が大きく、ネガティブ過多となろう。

第二に、第一の流れからその他金融商品の悪化も始まる。金融には信用創造で経済規模を膨らませる効果があり、一つの金融商品を通じて連鎖的に様々な金融商品の価格を上げる。A に集まった資金でB を買い、B からB-1、B-2、更にはB-1からC-1、C-2、C-3へと派生的に資金が展開される。それぞれに実体はなく「マネーがマネーを生む」のだ。そのうちの一つ、例えばC-2が崩れると連鎖爆発のようにその他商品にも影響が出るのは自明。最後には発端のA にも飛び火し、A の権利者である投資家の資産価値が毀損、景気への警戒感を招いて消費減退を促す。まさに逆資産効果、これがマネー収縮の姿だ。なお日銀で言えば、保有する債券価格の下落にあわせてETFの価格下落から中央銀行としての世界の信を失う。これが円の価値低下につながる。いや既に、足元の円安はマネーの収縮という警戒感を先取りしているのかもしれない。

第三に、マネーの収縮が行くところまで行ったら、景気悪化に伴う企業倒産も多発する。原因の一つは金利上昇による資金再調達コストの上昇だ。経営者にとってこれ以上の負担は重く、潔く企業を畳もうとする。先見の明がある場合は悪化が顕在化する前の資産価値が高い状況下で自社の売却を試みる。M&A が活性化しているのが証拠だ。なおM&A は暴落後も継続して活況を呈するだろう。
この状況を待たずに、株価低迷や金利上昇など、過剰流動性で破壊された景気循環が戻る。そしてようやく景気サイクルに沿った伝統的なアセット・アロケーション戦略が復活する。その際、ボロボロになっているだろうインデックスファンドに代わり、長期視点に立ったアクティブファンドが台頭するはずだ。

 

創意工夫と行動・努力する者を富ませ、怠る者との格差が開く

資産バブル時における個人への影響は、「持てる者を富ませ、持たざる者との格差が広がる」である。それがバブル崩壊によって「創意工夫と行動・努力する者を富ませ、怠る者との格差が開く」となろう。
努力する者、怠る者に共通した手があるとしたら、それが資産運用だ。つまりお金にも働いてもらうのだ。

できれば余裕のある今のうちから資産運用に励み、景気低迷時に備えて心の余裕を確保しておくことが肝要。ただし全面資産高の今、投資先に何を選んでも暴落のダメージは避けられない。
だからこそ時間分散となる“ つみたて投資” によって、景気サイクルにかかわらずコツコツと続けることが必要となる。景気の良い時も悪い時も、コツコツと積み上げた資産はいずれ大きく育つだろう。景気サイクルの読み込みはアクティブファンドに任せておけばいい。アセット・アロケーションを駆使して相場という波乗りを上手に果たしてくれる、そういったアクティブファンドをつみたて投資しておけば大丈夫だ。

 

実体経済をベースとした相場は力強いものとなる

リーマン・ショックやパンデミックで暴走し尽くした金融経済と決別し、次なる市場は実体経済を中心とした健全なものとなる可能性が高い。これまでの金融的相場に見られた派手さはないかもしれないが、しかし、暴落を経て復活した相場には力強さを感じられることとなろう。

マネーがマネーを生む循環相場から、富を生む企業がマネーを生むという相場構造にシフトする。価値を生み出せる企業を選び、じっくりとその価値向上に寄り添う姿勢が試されてくる。そういった至極真っ当な相場環境になるということは、王道たる長期投資家が闊歩する時代が来るということなのだ。

 

【2024.5.5記】代表取締役社長 澤上 龍

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