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飛行機の外に出ると、湿度を帯びた高温の外気が身体の中に入り込んできた。果実、花々、そしてスパイスが混ざり合ったような南国特有の香り。

6月10日、私たちはタイ、バンコクに降り立った。早速、さわかみタイランドの代表である川上との再会に向けて足を速めた。

「川上さんは元気にやっているだろうか?」

ここで改めて紹介したい。さわかみアセットマネジメント(タイランド)株式会社とは、2019年にタイはバンコクで設立された現地法人である。コロナ禍を経て、2022年にタイ証券取引委員会からついに証券ライセンスを取得。

翌年7月に「さわかみミックスドファンド」の運用が開始された。あれから一年。今回の訪問の目的は、東南アジアで始まっている本格的な長期投資を一層強力に後押しすることであった。

 

高齢化社会、日本

世界最高水準の高齢化社会を突き進む日本。生まれる子供の数は漸進的に減り続け、2023年で8年連続過去最少を記録した。国が抱える債務の増加もとどまるところを知らない。国民がこの国の未来に不安を覚えるのも無理はない。

それでもだ。衰退が叫ばれて久しい日本ではあるが、日本の社会保障制度は世界的に見て、未だ驚くほどに盤石であるという事実は指摘しておきたい。

図1※は、国別の公的年金のカバー率を示している。ご覧の通り、日本国民の働き手のほぼ100%が公的年金によってカバーされている。これは、日本という国は未来に対してしっかりと“備えがある国”であることを意味している。

もちろんこれは現時点での絵図であり、将来を約束するものではない。少子高齢化が進む中で、引退世代を支えてくれる現役層の人口は少なくなるわけだ。現役層から支援を受ける仕組み(賦課方式)を運営する以上、年金の財源を確保することは、これからさらに難しくなっていく。ともなれば、将来にむけて国民一人一人が自分の未来を自己防衛しなければならない。日本で今、資産運用の重要性が広く認識され、強く訴えられているのは必然の成り行きだ。

ここで着目すべきは近隣のアジア諸国の状況である。

 

老いが進むのは日本だけではない

図1にあるように、近隣の東南アジア諸国は、経済発展を重ねるも、社会保障の仕組みは決して盤石とは言えない状況だ。概して、国民の50%程度しか公的年金への加入ができていないのが現実だ。同時に、経済の推進力である現役層の人口はこれから減少に向かい、東南アジア諸国もこれから本格的な高齢化が始まるのだ(図2※)。

そう、少子高齢化が叫ばれ、未来への準備が必要なのは決して日本だけの話ではないのだ。むしろ社会保障システムが普及しきれていない東南アジア諸国こそ、国民一人ひとりの未来への準備が必要であると言える。

人口減少、介護、医療、そして年金問題など、高齢化社会は多くの社会課題をもたらす。しかし、いつの時代も必要は発明の母。そこには同時にイノベーションの種がある。日本は多くの社会課題を世界に先んじて経験することになる。だからこそ、それは逆に大きなアドバンテージになり得る。

ならば、「アジアの未来」に向けてさわかみファンドが日本で四半世紀に亘り歩んできた経験を再現できないだろうか。とりわけ、日本で培われた長期投資の精神は、種を蒔き、水をやり、時間をかけて作物をかけて育てていく、そんな同じ農耕文化を持つアジア諸国においてきっと高い親和性があるはずだ。

「さわかみミックスドファンド」がタイで誕生して1年。東南アジアで生まれた長期投資は、これからさらに勢いを増していくだろう。そしてその先に、さわかみ投信は、アジア諸国ひいては世界への展開を見据えている。

「川上さん、楽しそうですね!!」

川上はこれまで以上に元気だった。氷入りのビールを手に、未来に向けて乾杯を交わした。

さぁ、日本から世界へ、新たな挑戦を広げていこう。
 
 
【取締役副社長 熊谷 幹樹】
 


■出典■
※図1・2 2024 年2 月11日 日本経済新聞記事「老い迫る東南ア、備え薄く年金カバー2 ~ 5 割台 膨らむ負担、鈍る成長」より

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