さわかみファンドはこの8月で25周年を迎える。まだ25年。されど25年。この四半世紀において、社会には私たち人類の想像を超える変化があったことは確かだ。その中で、さわかみファンドは長期投資を実践し、2000年初頭のITバブル、リーマンショック、そしてコロナ禍を乗り越え、25年に亘り年利回り7.1%(つみたて購入)で歩めたという事実については、然るべき足跡を残せたと自負している。その上で、これからの未来を想像する前に、少しばかり過ぎ去った過去を振り返ってみよう。
四半世紀『前』の時代
1999年。当時はインターネット革命の黎明期。パソコンが家庭に普及し始め、メールのやり取りが日常となりつつあった。携帯電話はまだ電話とメールが中心。インターネット接続はダイヤルアップが主流で、「ピーヒョロロロ…」という音が日常の風景だった。
Amazonは本を売るオンライン書店として知られ、Googleは設立間もないスタートアップだった。ブロードバンドやWi-Fiは一部の先進的なユーザーにのみ利用され、YouTubeやFacebook、Twitterなどのソーシャルメディアは存在していなかった。そして2007年、iPhoneの登場により時代は変わった。世界は瞬く間に繋がり、人々のライフスタイルは一変した。こんな未来がやってくることを、誰が想像できただろう。つくづく思う。未来を予測することは本当に難しい、と。
そして近年、AIの進化は目覚ましい。複雑な分析や予測、創造的なタスクまでこなすようになった。四半世紀後、社会はどのように変わっているのだろう?
四半世紀『後』の時代
今日から25年後の2049年。AIはさらに進化し、人工知能が人間の能力を超え自律的に進化し続ける時点「シンギュラリティ」に2030年代には到達するという予測もある。その時、労働環境は大きく変わっていることだろう。そもそも人類は働いているのだろうか?実際のところそれすら誰にもわからない。例えば、弁護士や会計士といった論理や知識を基にした職業は、きっとAIがリードするだろう。AIは法律や会計の専門知識を持ち、人間以上の効率で仕事をこなす。
教育も変わる。知識の詰め込みは不要になる。AIに一声かければ済むからだ。人間は創造性や芸術性をより重視した教育を受けるようになる。先生の役割はもちろんのこと、教育そのものが根本的に変わるに違いない。
バイオテクノロジーの進化により、人間の寿命が大幅に延びる可能性もある。遺伝子編集や再生医療が進化し、病気の治療や老化の遅延が現実となるだろう。未来の可能性は無限で、考えるだけで心が躍る。
変わる未来、それでも人間は変わらない
未来の社会がどれほど劇的に変わろうとも、変わらないものがある。それは人間の本質だ。さわかみ投信の長期投資とは、この変わらない人間の活動や性(さが)に根ざしたものだ。嵐の時も、凪の時も、そこには人間の生活が存在する。人間はご飯を食べ、寝て、より安全を、より健康を、より良い未来を求める。
さわかみファンドは、そんな未来づくりに貢献する技術、サービス、そして価値観や哲学を持つ企業に投資している。これは創業以来変わらない投資哲学だ。未来の行く末は誰にもわからない。だが、そこにも必ず人間の生活が存在する。それを支える企業へのニーズは消えることはない。一時の流行や熱狂に左右されず、変わらない人間がつくる新しい未来に貢献する企業に投資し続けることとは、極めて合理的な選択だ。そう、さわかみ投信の投資とは、変わらない人間がつくる新しい未来への『人類の営みへの投資』とも言えるのだ。
未来への出航
2049年の世界。さわかみファンドが組み入れた企業たちが、私たちの生活をより豊かに彩り、充実させていることを願ってやまない。その一方で、1999年のさわかみファンド創設以来歩んだこの25年の道のりを、投資家であるファンド仲間の皆さま、投資先企業、そして共にさわかみ投信で働く仲間たちとともに称えたい。そして、新たな未来への航海をここに誓いたい。
【取締役副社長 熊谷 幹樹】