数字が語らない真実
先日、調査機関から「少し話を伺いたい」との依頼があった。新NISAが始まり、投資が浸透し、インデックスファンドの人気が高まる中で、アクティブファンドの顧客満足度について意見交換をしたいとのことだ。「満足度」という言葉は耳にするが、よくよく考えてみると、これは深い“ 問い”でもある。せっかくの機会だ。意見を聞いてみようじゃないか。
最初の問いは、「純資産額は、顧客の満足度の表れだろうか?」というものだった。確かに、ファンドの規模が大きいのは、多くの投資家が期待を寄せている証拠だ。
しかし、規模が必ずしも満足度を反映しているとは限らない。時には、その規模が営業力やマーケティング力によって決まることもある。営業パーソンが「旬のファンド」として売り込むことで、短期間で巨額の資産を集めることもあるが、瞬時に集まった巨額の資金を適切に運用するのは容易ではない。かつて多くの投資家の期待を集めて誕生した巨大ファンドが、結局「不満足」に終わった例も少なくない。
そもそも、満足とは何だろう?
投資はリターンを期待するものだ。リターンがなければ、崇高な理念や哲学も寝言だ。だからこそ、世の中には様々なリターンの指標が存在する。月次リターン、1年リターン、3年リターン、インデックスをどれだけ上回ったか…投資家が気にするデータは多い。
しかし、多くのファンドマネージャーもサラリーマンであり、ファンドのパフォーマンスが自身の評価に直結するため、短期間で成果を出さなければならないというプレッシャーがかかる。
市場が好調な時は、現金をフルベットした方がパフォーマンスは良く見える。しかし、相場が下がると大きなマイナスに引きずり込まれる。逆に、現金を残せば、それが未来への備えとなる。だからこそ、1年や3年の短期的なパフォーマンスを競うことが、本当に投資家の満足につながるのか、疑問が残る。
本質的な満足の追求
市場や株価は常に変動するものだ。その中で得られる一時的な成功は、まぐれに過ぎない。再現性ある成果を生むにはプロセスが重要だ。さわかみファンドが創業以来一貫して実践してきたのは、相場が上昇しているときに現金化を進め、下降局面に備えるスタンスだ(下記イメージ図)。この「安く買って、高く売る」という投資の基本を守り、長期的な視点で投資家の財産形成を支えてきた。過去の危機も絶好の投資機会として行動してきた。このリズムを保ち、経済の波を乗り越えることが、長期的にリターンを生む合理的な選択だと確信している。
私たちが目指す満足とは、投資家が「いつの間にか、こんなに増えてたんだ!」と喜べる未来だ。
毎月の積立投資を継続し、日々の市場の浮き沈みに意識を奪われることなく、その時間をもっと自分の人生に使ってほしいと願っている。私たちは、投資家が安心と期待を胸に人生を歩み、未来に確かな希望を感じられる人生のパートナーであり続けることを目指している。
そのために、私たちは投資家にとって身近な存在でありたい。毎月のレポートはもちろん、セミナーや年一度の運用報告会での交流も、これまで以上に大切にしていきたい。
こうして、運用会社との信頼関係を築き、長期投資を実践することこそが、結果として、人生における財産形成、そして人生の充実に向けた最も合理的な選択なのだ。そしてこれこそが、さわかみファンドが目指す真の「満足」なのだ。
話に熱が入り、時間を忘れた。「ごめんなさい!」と急いで客人を見送り、その日を終えた。そしてその時、改めて私たちが進むべき道を確認できた夕暮れのひとときとなった。
【取締役副社長 熊谷 幹樹】