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「言葉の力で、一人でも多くの人に勇気と安らぎを届けたい。」
そのように願う碧魚まりさんの言葉は、未来を築く力そのものです。
この度、さわかみ投信が夢に向かって頑張る人を本気で応援する「#かなえたい夢プロジェクト」の一環として、まりさんに『長期投資だより』にて定期的にエッセイを連載していただけることとなりました。
小学校教員としての経験を持つ彼女が描く『日本の未来』とはどのようなものでしょうか。

まりさんの言葉たちが、皆さまの心に届き、未来を育んでくれることを願っております。

 


 

本と向き合う子どもたちを数多く見てきたが、
とりわけ物語を楽しめる子には、聡明な子が多い。
10 年近く小学校の教壇に立ち続け、肌感覚ではあるが、そう感じている。
工夫を凝らした言葉遣い、情緒的な描写や表現に触れるからこそ、自然と語彙力が磨かれ、理解力や思考力にも長けるのだろうか。

 

物語の登場人物たちの感情に、素直に没入しながら
「わたしは、こう感じたよ。なぜなら~っていう言葉があったから。」
「○○さんの言いたかったことは~ということなんじゃないかなあ。」
など、自分や他者の気持ちを的確に言い表すので驚かされることも多い。

 

かつて担任したみなちゃん(仮名)もそんな子どもの一人だった。
図書の時間はもちろんのこと、給食後のわずかな時間であろうと周りが騒がしい休み時間であろうと、一度本を開くとその世界に没頭していた。

 

「みなちゃんはどうして、そんなに本が好きになったんでしょうか。」
不思議に思って、お家の方に懇談で尋ねてみたことがある。
「わたしも妻も本が大好きで、毎週図書館へ行くんですよ。幼い頃から一緒に通っていたら、この子の方が様々な本を読むようになりました。」
また、家で同じ本を読んで「どう思った?」と感想を共有することもあるそうだ。
少し照れくさそうに話すお父さんの話を聞いて、読書が好きになる原体験として、家族の影響が大きいのだと改めて納得したのだった。
素敵な物語も「読みなさい」と強制されると、途端に楽しさは遠ざかってしまう。
親自身が読書を楽しむ姿を見せることが、夢中の入口になるのだと思う。

 

一方、世間では子どもの「読書離れ」が叫ばれ続けている。
学校でも、みなちゃんのような子はどちらかと言うと珍しく、図書の時間に読みたい本をなかなか見つけられない子、空いた時間に読書ではなくタブレットに没頭している子が多くなってきた。
確かに「読書」が苦手な子が増えた実感はある。
しかし「物語」が嫌いな子が多いのか、と聞かれるとそうではない気もしている。

 

たとえば国語の時間「スイミー」「お手紙」「モチモチの木」「ごんぎつね」など教科書の物語を題材に、一緒に読み深めることができれば自分なりの気づきや感想を言葉にするとき、どの子も実にいい顔をしていた。
物語を味わうことができる感性や素地は、いまも変わらず存在しているのだと思う。

 

 

 

物語の世界観に浸ることで、心を動かす体験を経た子どもたちは、知らず知らずのうちに「友だち」とは何か、「やさしさ」とは何かなど生きる上での普遍的なテーマについて向き合っている。
そして、物語から受け取ったメッセージは時を経ても生き続ける。

 

私の話になるが、大学時代、数日気持ちが凹んでしまう大失敗をしてしまったことがあった。
そのときふと「わたし、たくさん失敗をするけれど、もう同じ失敗はしないわ。」という言葉が脳裏によぎった。モンゴメリの「赤毛のアン」の主人公アンの言葉だ。
「赤毛のアン」は、まさに小学生のときに読んだ物語だった。
落ち込んだ場面で、このメッセージがふと蘇ってきたことを不思議に感じたが、おかげでまた明日から前を向く勇気がもらえたのだった。

 

出会えた物語の数だけ、いつか必要になる心の栄養が蓄えられていく。
私はいま、読書が嫌いな子たちにこそ、
物語を好きになるきっかけを作れないか、ずっと試行錯誤している。
あらゆる困難が立ちはだかるこの世界を、
一人の主人公として力強く生き抜いてほしいから。

 

願わくば私のエッセイの言葉たちも、
いつか誰かの人生を拓く物語になれますように。

 

 

 

あおうお      

碧魚 まり

note というSNS でエッセイを書き始めて4 年。いつか文章を書くことも仕事にしたい小学校の先生。食べること、書くこと読むこと、ことばにまつわることが好きな1992年生まれ。

 


 

 

 

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