資源豊かな国々は、地下に眠る財宝、石油やガスを持っている。うらやましい限りだ。だが、日本も負けてはいない。なにせ日本には、地下金庫ともいえる2,200兆円の埋蔵金があるのだ!しかもその半分、約1,100兆円が預貯金として銀行の中で眠り続けている。サウジアラビアの年間石油収入が40兆円ほどとされる中で、この日本の潜在力は、まさに世界に誇れる財宝だ!
しかし、そのお金が動かず眠ったままであることは、大きな問題だ。「貯蓄から投資へ」を掲げ、政府は2024年初頭から新NISAを導入し、家計の投資を促している。2027年までに56兆円の投資額を目指すという壮大な目標も掲げられている。
それでもなお、多くの資産はいまだ預貯金に眠ったままだ。特に60歳以上の世代がその大半を保有し、70歳以上の高齢者が全体の資産の約40%を持っている。さて、この巨額の眠った資産をどう目覚めさせるか?
いっそのこと、消費旺盛な現役世代に思い切って贈与して経済を活性化させてみてはどうか? でも、資産の世代間移動は贈与税が高すぎて難しい?
実際、日本の贈与税率は最高55%と、世界的に見ても高水準だ。例えば、アメリカは40%。オーストラリアやシンガポールではそもそも贈与税がない。
だが、日本で贈与が進まない理由は税率だけではない。実際、日本には2,500万円の贈与税の繰り延べ制度に加えて最大3,500万円程度の非課税枠がある。住宅取得資金で1,000万円など、賢く使えば贈与税への心配が過剰であることがわかるだろう。
それでもお金が動かない最大の理由、それは結局のところ「将来への不安」ではないだろうか? 健康、介護、長寿のリスク。こうした不安が、シニア層を消費や投資から遠ざけているのかもしれない。しかし、この不安がまた、新たな不安を生み出している。それが「経済の停滞」だ。シニア層がお金を溜め込むほど、経済は老いていく。シニア層が抱える不安が、まさに日本経済を老化させているのだ。
答えはシンプルだ。日本を元気にするには、シニア世代が今すぐ猛烈に、そして強烈に消費を始めることだ。今こそお金を使って、人生をトコトン楽しむ時だ。青春時代の趣味、新しい趣味に没頭しても良い。シニア層が旅行をすれば、地域経済が活性化し、新たな雇用が生まれる。現役世代にも収入源として直接的な追い風となる。消費こそが経済を支えるエンジンなのだ。
さわかみ投信は四半世紀にわたり、日本経済を元気づけるべく、長期投資を実践してきた。しかし、これからさらに重要になるのは、「増やすだけではなく、どう消費するか」だ。経済は循環するもの。シニア世代の元気な消費は、巡り巡って若い世代の希望となる。そして、日本経済は再び活力を取り戻す。
投資と消費、この二つが未来をつくる力だ。シニア世代が積極的にお金を使い、経済のエンジンを回せば、次世代への希望が膨らむ。希望をつくる消費、それこそが「かっこいいお金の使い方」ではないだろうか?
そして、さわかみのファンド仲間の皆さまこそが、その先駆者として未来を切り拓く消費を始めていただけたなら、それこそが、さわかみ投信にとっての本望であり、何にも代えがたい喜びである。
貯蓄から消費へ――それが日本経済の新たな動力となる。
【取締役副社長 熊谷 幹樹】