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投資信託(ファンド)の最重要指標である基準価額。受益者(投資家)の資産価値をダイレクトに示すために無視できない存在である。『基準価額×保有口数』が保有するファンド資産額となり、基準価額が上がれば資産も増え、下がれば資産が目減りする。保有資産の損益を計るならば、『平均購入単価×保有口数』が拠出した金額となり『基準価額-平均購入単価』が正か負かで含み損益がわかる。
基準価額は各金融機関のWEBサイトやファイナンス系のポータルサイトなどで日々更新される。したがって保有するファンド状況はすぐにチェックできる。また新聞紙面にも上場企業の株価と共に日本に存在する全公募ファンドの基準価額が掲載される。そこで気付く。投信基準価格? 基準価額ではないのか?

 

価格と価額の違い

基準価格と基準価額は通常同じものを指すが、本稿では敢えてこだわって区別してみたい。
価格とはプライスである。プライスは取引における時価で、それ以上でもそれ以下でもない。他方で価額はバリューという意味を持つ。全受益者に帰属する純資産額(ファンド資産額)を総口数で割ったものが基準価額(10,000口当たりの純資産額)であり、つまり価値だ。
価格(プライス)と表記されれば、まずそれが「高いか安いか」からアプローチされる。しかし価値(バリュー)には高い・安いが存在しないため「上がるか下がるか」が重要。どういうことか?
例えば、近所のスーパーでサンマが115円で売られており、隣町のスーパーでは同じサンマが98円…足は隣町へ向かうはず。または115円のサンマは諦めて違う食材に手を伸ばすかもしれない。つまり価格ありきなのだ。
他方で価値は商品に対し原則一つである。価値の現在価格が手に届くかどうかは別にして、購入する際にはその商品の将来価値の向上に期待を抱くものである。実際に動くのは市場価値、価格はそれを計る数字でしかない。

 

価格で売買する投資家の多いこと/価額に投資をしよう

基準価額に高い・安いはないと述べた。仮にファンドの中身がすべて現金であった場合、高いも安いもないからだ。大切なのはファンドが何に投資をしており、その中身が今後どうなるかしかない。それにもかかわらず「最近の基準価額は高いから買い難い」はおかしいのである。
気持ちはわかる。今の水準で買うと自身の平均購入単価を引き上げてしまうなど理由はそれぞれ。または、インデックスファンドを代表する指数連動型ファンドであれば、対象となる指数(平均株価など)に過熱感がある場合に割高感を抱くなどだ。
実は企業の株価にも同じことが言える。さすがに株価は需給で動く要素もあるので、ファンドの基準価額と全く同じとは言い切れない。しかし株価の先には企業“価値”があり、長期では株価は価値に収れんする。したがって長期投資になるほど株価よりも価値の向上に目を配るのは必然となるのだ。

価格を売買するのをトレードと呼び、価値を見るのがインベストメントだ。“基準価額”を買うのではなく、ファンドの哲学や中身に着目して価値向上に期待を抱くのが理想。だからこそ新聞紙上の“基準価格”には違和感を覚えるのだ。

【2024.9.6記】代表取締役社長 澤上 龍

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