先般実施されました運用報告会での発表内容についてご紹介いたします。今回の運用報告では、(1) 基準価額は設定来高値を更新、(2) 金融株主導の相場環境、(3) 第26期に向けて、の大きく3点についてお話ししました。
まず25期の結果について。さわかみファンドの基準価額は39,101円で終え、複利年率では5.6%になりました。期中では24年7月に42,873円を記録しました。口数や純資産額、株式評価額、現金等は上図の通りです。
第25期の相場環境は第24期に引き続き、さわかみファンドにとっては向かい風となりました。下図は東証33業種の値上がり率の上位10業種です。特に、保険業や石油・石炭、証券・商品先物取引業、銀行業の好調さが際立っています。保険業や証券・商品先物取引業、銀行業は日本銀行の金融緩和政策の修正や新NISA開始の恩恵を受ける業種として物色されました。また石油・石炭は東証によるPBR1倍割れ是正のため、積極的に自社株買いを進めたことが好感されました。他にも上位10業種ではその他金融や不動産といったさわかみファンドでは(現時点で)投資対象としていない業種の好調さが目立ちました。これら業種からの値上がり益を享受できなかったことについては遺憾ではありますが、さわかみらしい企業への投資により、投資収益の獲得および良い世の中づくりを追求していく必要があると考えています。
売買行動では、投機ポジションの積み上がりによる過度な円安の是正や欧米景気の悪化に備え、景気敏感な業種の売却を行い、相対的に安定度の高い業種の比率を高めました。具体的には、生成AI関連やパワー半導体関連への投資で株価が大幅に上がったディスコや自動車生産回復と円安の恩恵を受けた自動車関連企業を中心に売却を行い、アサヒGHDやソニーGなどの買い付けを行いました。
また昨年度もご報告申し上げた通り、日本株中心の運用調査および外国株の選択と集中を引き続き実施いたしました。結果として日本株は新規に18社へ投資を行い、外国株については7社の売り切りを行いました。外国株は組入銘柄数で11社と厳選することで調査の質をさらに高める方針です。今後とも日本株のユニバースを拡充し、世界的な経済情勢や金融政策が転換していく中で、企業努力によって長期的に企業価値を高めていけるであろう日本企業を発掘して参ります。
第26期は、景気悪化を背景とした米国における金融引締政策の是正、および日本のインフレを背景とした日本銀行による金融緩和政策の修正度合いの見極めが重要なポイントになりそうです。8月初旬に10%以上の大きな下落が発生したように、株式市場は今後の市場動向に非常に神経質になっております。また日本と米国ともに重要な選挙イベントも控えています。現時点で正確なことは申し上げられませんが、好調であった前々期や前期に比べて、守りながらの運用を迫られる可能性もあると考えています。
しかしながら日本企業の変革は目を見張るものがあるのも事実です。事業環境の変化に対して、これまで以上に柔軟に対応する企業統治が根付いてきているとも感じています。気まぐれな市場に振り回されず、個々の企業の長期的な成長力や絶対的な価値をしっかりと見極めることが肝要であると考えています。
絶対的なリターンを追求するファンドとして中長期的に基準価額を更新し続けるとともに、ファンド仲間の皆さまの資金ニーズに応えていけるよう運営する所存です。
【運用調査部 ファンドマネージャー 坂本 琢磨】
今後の運用調査について
運用報告会では、変わらない点、第26期の強化のポイントと進捗状況についてご説明しました。なお当日の説明では写真公開可能な案件に絞りました。本稿では末尾の表にキーワードのかたちで報告いたします。
➊変わらない点
三人四脚の価値観、長期投資のリズムは今後も堅持いたします。長期投資を通じて未来をともに切り開いていく面白さを皆さまと分かち合う点は変わりません。前期から取り組んでおります知財・無形資産情報の目利き力の強化についても継続しています。
➋第26期の強化のポイントと進捗状況
さわかみ投信は創業時から、現在の財務の数字には現れにくい企業の将来価値を読み込む力を培ってきました。その洞察力を強化するために前期から新たな施策に取り組んでいます。施策のポイントとして、「広く、深く、遠く」そして「推(イマジネーション)と論(ロジック)」の当社伝統の思考プロセスに加え、「体験知性」を強化し生成系AIにはできない未来予測の精度を上げていきます。
そのために、海外拠点、研究機関、次世代交流、未上場企業などこれまでにない連携づくりを進め、質の高い一次情報に継続的に触れる仕組みを構築しています。ここで言う一次情報とは、企業の海外工場の現地リーダー、また国内外をリードする研究者や、地域未来牽引企業の経営者の皆さんとの真剣な議論から得られる実体経済の生の声です。実体経済へのアプローチと高度な専門家とのアイデア交換によって「広く、深く、遠く」未来を洞察する力を鍛錬します。私はそれを当社の運用調査チームしか持ちえない「体験知性」だと思っています。マスコミの報道や上場企業の決算説明資料などの情報はすでに株価に織り込まれているものがほとんどですが、私たちは体験知性から得られた知見から大胆に将来を「推(イメージ)」し、それをチーム内で議論し「論(ロジック)」を詰めて思索を深めます。そこで得られる未来予測がさわかみらしい、みずみずしさを持った長期投資のアイデアとなります。施策は2年目で道半ばですが、私たちの体験知性の掛け算の知恵は圧倒的なスピードで向上しています。これらの長期投資アイデアを強みに世界一の運用調査チームを目指しますので、どうぞご期待ください。
【取締役最高投資責任者 兼 運用調査部長 黒島 光昭】
■「さわかみファンド」運用報告会2024/第25期運用報告の講演風景