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ビジネスシーンをはじめ、メディア等の報道でもよく耳にする言葉「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」。
DXは2004年にスウェーデンのウメオ大学の教授であったエリック・ストルターマン氏が「ICTの浸透が従来の情報システムの延長とは異なり、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に、継続的に変化させる」と提唱し、社会全体の変化を表した概念のこと。
日本では2018年に経済産業省がDXレポートを発信したことで浸透していったと言われています。同省が引用している定義によると企業がデータとデジタル技術の活用をもって変革し、その競争力を向上させることが目的とされています。
VUCA時代の中で企業が生き残るためにDXへの注目度は高く、多くの企業が業界の垣根を越えて注力しています。私の担当する建設業界でもDXは生産性の向上と社会課題の解決につながるとして注目されています。

課題解決に向けた取り組みは何十年も前からはじまっている

日本の建設投資額は1960年の約2.5兆円から拡大を続け、1992年に約84兆円とピークを迎えました。ピーク後は減少傾向が続き2011年には約42兆円とおよそ半分になりました。
その後は2023年度に見込み額で約71兆円まで戻し、先行きの見通しも拡大傾向にあります。ただ業界が回復傾向にあるというよりは建築コストの高騰が主因となっていると考えられます。建設業界の就業者数で見るとピークだった1997年の685万人から2023年には483万人と約29.5%減で現在も減少傾向です。労働人口の減少は人件費の上昇を引き起こし、それを補う機材・設備も必要となり、資材・物流費、エネルギー等の高騰も相まって建設コストの上昇圧力は当面続くことが想定されます。

建設業界は私たちが日々利用する建物やインフラを造り、その整備やメンテナンスを担う業界で社会に必要不可欠な産業の一つです。ただ労働人口減少や従業者の高齢化とそれに伴う技術継承問題、労働環境問題やカーボンニュートラルへの対応など多くの課題に直面しています。さらにその労働特性から他産業に比べ労働生産性が低く、生産性向上への取り組みも求められています。

機械の自動運転や電動化など近年話題になることが増えていますが、その研究は十年以上も前から進められ、その成果が今日の世界初の製品・技術としてあがってきています。建設現場の変化も著しく、新しい製品の導入によってこれまで複数人で対応していた作業を一人で可能とし、機械に現場図面をインプットすることで熟練者並みの重機作業が新人でもできるようにするなど、労働生産性は着実に向上してきています。ここから更に生産性をあげるための建設DXに期待が寄せられているのです。

いい社会をつくっていくためには長期視点が不可欠

私たちが普段から利用している道路や橋などの公共インフラや電気・ガス・水道などの生活インフラはあることが前提の上に生活が成り立っていますが、陰ながら支えてくれている人たちがいるからこそ日々安全に利用できているのです。日本は多くの課題も抱えていますが、企業は課題と向き合い、克服していこうと年月をかけて様々な取り組みを行ってきています。さわかみファンドではそのような企業に早くから着目し、DXが流行する前から投資しています。目先の事象だけに捉われず、10年20年先を見据えて子供たちにいい世の中を残していけるよう、これからも社会に必要とされる企業を長期投資家として応援していきます。

 

【運用調査部 アナリスト 鈴木 潤】

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