10月の衆院選が終わり、師走の足音が聞こえるこの季節、ふと立ち止まって問いかけてみる。
「私たちはどんな未来を選んだのだろう?」
選挙時に飛び交った耳当たりのよい主張。短期的な負担軽減策が多く聞こえたが、その実現には不透明な点が多い。少子高齢化で増え続ける社会保障費。しかし、その財源についての議論がなければ、結局その負担を背負うのは若い世代だ。
どんな未来を選ぶのか? 選挙だけがその手段ではない。自分がどう生きていくかを私たちは毎日選んでいる。その選択こそが、未来を大きく左右する。決定権は常に自分にある。
都市集中の代償と地方の可能性
ここで少し考えてみたい。皆さんは将来どこで生活したいだろうか? 確かに、都市生活は便利で刺激的だ。だが、インフレに加え、都市部では住居費も高騰。利便性の裏にひそむ「代償」が少しずつ重くなっている。人口が都市に集中するほど、こうしたコストはさらに増加しかねない。
一方、地方にはゆったりと広がる居住空間、季節ごとに彩りを変える豊かな自然、地元で採れた新鮮な食材がある。地方には、都市では得られないゆとりがあり、生活コストも抑えやすい。皆さんは、地方での生活にどんな未来を思い描くだろうか?
新時代の新しい学び方と働き方
「子どもが良い教育を受けるには都市に住むしかない」── そんな常識は、今や時代遅れかもしれない。スマホ一つで、世界最高水準の授業が受けられる時代だ。場所に縛られない学びの環境は、地方に住む子どもたちにも無限の可能性を広げている。
また、AIが急速に進化し、知識や計算業務はAIが引き受ける時代。これからは、人間にしかできない「ひらめき」や「創造性」が求められる。逆に言えば、そうしなければ人間は職を失ってしまうだろう。
となると、都会の狭い部屋で創作するより、自然に囲まれた地方での生活は、こうした創造性を引き出す理想的な環境になりえる。自然に触れ、静寂の中で集中する時間は、都市の喧騒では決して得られない。風の音、木々の香りが、私たちに深い洞察や独自の発想をもたらしてくれる。
新しい時代を想像してみよう。そこには、新しい働き方、新しい学び方、そして新しい生き方が待っている。
地方生活と長期投資がもたらす新たな豊かさ
自然のリズムに沿った「人間らしい豊かさ」については上に触れた。だが、ここで重要なのが、地方生活と組み合わせる「長期投資」だ。地理的な制約にとらわれず、世界経済の成長に向けて投資は実践できる。そして、投資により得たリターンが100万円であったとしても、生活コストが抑えられる地方では、その100万円がより豊かな暮らしを支える大きな力となる。地方に住み、長期投資を実践することは、より豊かな生活への合理的な選択といえる。
新しい時代には、今の常識を超える変化が私たちを待っている。そんな未来を見据え、都市部でなくとも生活の豊かさを実現できる今、地方での生活と長期投資を通じて未来に備える選択を考えてみてはどうだろうか。
長期投資とは、単なる財産形成にとどまらず、人生をどう選ぶかという問いかけでもある。それを考えるきっかけの一つになれることも、さわかみ投信の使命である。
【取締役副社長 熊谷 幹樹】