「言葉の力で、一人でも多くの人に勇気と安らぎを届けたい。」
そのように願う碧魚まりさんの言葉は、未来を築く力そのものです。
この度、さわかみ投信が夢に向かって頑張る人を本気で応援する「#かなえたい夢プロジェクト」の一環として、まりさんに『長期投資だより』にて定期的にエッセイを連載していただけることとなりました。
小学校教員としての経験を持つ彼女が描く『日本の未来』とはどのようなものでしょうか。
まりさんの言葉たちが、皆さまの心に届き、未来を育んでくれることを願っております。
先日、今年1年間の出生数が初めて70万人を割る公算が大きくなったというニュースを耳にした。
価値観の多様化で、未婚や晩婚傾向が進んだことに加え、コロナ禍により結婚や出産を控えた人が増えたことも影響しているそうだ。物価高などの経済状況もあり、子どもを育てるというハードルが年々高くなってきているのかもしれない。2人目はちょっと…と「産み控え」している夫婦も多いと聞く。
私事になるが、11月初旬に第一子、長女を出産した。産んだその日から、文字通りわたしの世界は一変してしまった。仕事にしろプライベートにしろ、今日はあれをしよう、これをしよう、と1日の流れやしたいことの決定権が自分にあったのに、その一切がなくなり1日の中心は子どものことになった。産後しばらくは、身体のあちこちが痛く、不調だった。その中で、授乳、ミルク作り、おむつ替え、泣いているのをあやすことを1日の中で幾度となく繰り返す。赤ちゃんのお世話であっという間に時間が溶け、気づけば1日が終わっている。そんな赤ちゃんとの暮らしは、大変だけれど、我が子の可愛さは想像を遥かに超えていた。爪、目鼻口、小さな小さな身体のパーツ。横から見るとぷっくり膨らんだほっぺ。元気によく動く手足。お腹が空いた、眠い、要求によって微妙に違う泣き方。ご機嫌な顔、きょとんとした顔、不満げな顔、くるくる変わってゆく表情。何をとっても「可愛い」で満ちている。
我が子は、お腹がいっぱいになったあと、縦抱きで背中をさすられると口を半開きにして、すうすうと眠りにつく。その健やかな寝顔を眺めているとき、大好き、可愛い、大切、愛おしい、尊い、様々な感情があふれ出す。どんな言葉で表すにも足りない気がして、この感情をなんと名付ければ良いかわからない。
大きな病気も怪我もせず、すくすくと育ちますように。周りの人に愛され、そして周りの人を愛する人生を送れますように。豊かな実りある人生を送れますように。色素の薄いふわふわで柔らかい髪の毛を撫でながら、これらの願いが言霊となって、この子を守ってくれるように日々、念じている。
また、眠っていれば、ちゃんと息をしているのだろうかと小さな胸の上下を確認せずにはいられない。あらゆることにおいて、これでいいのだろうか、と気がかりになってしまう。寝返りをうったり、手で布団を払いのけたりすることができないので、布団で口元や鼻が覆われてしまうと、息ができなくなってしまうことがある。あるいは吐いたミルクで喉がふさがってしまうことがある。そう知ったときは、思わず身震いしてしまった。親のちょっとした不注意がまさに命取りになってしまうことがあるなんて。なんと、か弱く儚い命なんだろう。
この瞬間にも、愛しき小さな命を生かすためにどれだけの親が必死になっているんだろう。事情があって生みの親の元で育てられることが叶わない子も、周りの大人が細心の注意を払いながら育てているに違いない。誰もが周りの大人から、存分な手間をかけられて生かされてきたのだとしみじみ実感する。
今は、半径1メートル内で世界が完結している我が子。これから、何を見て何を聞いて、何を考えて生きていくんだろう。暗いニュースを見聞きすることの多い、難しい時代に生きる、新しく誕生した約70万人の子どもたち。彼らが豊かに生きるには何ができるのだろうと改めて考えている。それと同時に、親として、そして先にこの世界に生きる先輩として、この子たちに胸をはれるような生き方をしたいと思う。
この世界を一緒に楽しもうね。
碧魚 まり
note というSNS でエッセイを書き始めて4 年。いつか文章を書くことも仕事にしたい小学校の先生。食べること、書くこと読むこと、ことばにまつわることが好きな1992年生まれ。
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