長期投資と短期投資に違いはあるのか
「長期とは何年ですか?」「良い企業でも株価が上がれば売りますか?」セミナーでよくいただく質問です。私たち運用会社は投資家から預かった資金を投資先企業の一部とする(株主となる)ことで、その企業の発展を資産の成長へと繋ぐ役割を果たしています。
一方、株主になるために株式市場の流動性を利用して売買しますので、その企業の本質的な価値とは別に、上にも下にも行き過ぎる株価の変動とも向き合う必要が出てきます。運用ビジネスの結果が株価であることは間違いありませんが、株価至上主義では「チップを与えられてマネーゲームに参加している」ことと同じになってしまいます。
とはいえこの違いに明確な線引きはありません。ゆえに目に見えないサービスの提供とそこへの信頼のみで成り立つ運用ビジネスは、毎日の変化の中で知らぬ間に間違った方向に進みバラバラになってしまう怖さを持っています。だからこそ投資家とファンドは常に“理念”という強い絆で繋がっている必要があり、むしろその矛盾を推進力に変えてしまう“直販”という体制こそが、それに対する解なのだと思います。
同業他社の窓から見たさわかみファンドの姿
私は当社でアナリストという仕事を17年前に初めてお預かりしましたが、一昨年に復帰するまでの3年間ほどは同業他社にご縁をいただいておりました。そこはまさに“株価”で勝負をする世界。現場でのスピードへの要求は大変高いものでしたが、それは機械的に投資済みの沢山の企業の状況報告であったり、「次何買えばいい?」というファンドマネージャーからの質問への対応であったりと、投資先を入れ替えるスピードそのものが目的となっているようなところがありました。
短期間での株価で評価も報酬も決まる業務は刺激的で、ある種中毒状態のような毎日を過ごすことができましたが…、そのような中初めて他社の窓からさわかみファンドを見た私が改めて実感したのは、12万人のファンド仲間の凄みでした。運用とは「ファンドという船に乗って大海原を航海する」ことに似ていますが、慣れない船旅では毎日の波(株価変動)に対する不安は付き物です。にも拘わらず、さわかみファンドの投資先企業にこだわり、そのリターンに質も求めるという運用方針に共感していただけていること、また大きな変動の中でもどっしりと構え長期的に資産を形成されてきた実績を持つ皆さまがいること、それは乗客というより正に“ファンド仲間自身がつくり上げている船である”とさえ見えたのでした。
それでも私たちは力強く進んでいく
さて26年目に入っているさわかみファンドの航海ですが、どうも穏やかとは言い難い状況が待っていそうです。実体経済が好調なのか不調なのかは斑模様で意見も分かれるところですが、現状の歪みには強い違和感があります。サプライチェーン効率化や循環型社会推進というグローバルで進めていた協力体制は、コロナ後の趨勢の中で自国第一主義が強まり逆回転を始めています。またそこを土台に形成されるべき様々な市場価格も、行き過ぎた過剰流動性が引くに引けないマネーゲームをつくり出しているように見えます。
不安は人を反応的にしがちですが、私たちは下を向くわけには行きません。子供たちは日々大人へと成長し私たちの生活も続きます。ご縁あっての復帰以降、私はこのさわかみファンドの大きな成長こそが後世に大人の背中を見せることになるのではないかとの思いを強くしています。
今年も理念に沿った変化は厭わず、愚直に直販を貫き、皆さまとのそばにいる努力を惜しみませんので、荒波を共に乗り切って行きましょう!
【運用調査部 アナリスト 斉藤 真】