「私たちにとって、“意思ある”株主の存在は成長を左右する」
ある日のこと、さわかみファンドが投資する企業のCEOと対話した際、同氏がそう語ってくれた。さらにこう続けた。
「未上場では市場がないため、投資家が替わりづらい。一方で、上場すれば投資家が自由に入れ替われる市場が存在する。株を買う投資家は私たちに興味を持っているからこそ買う。逆に興味を失ったなら、売ってもらった方が健全だ。意思を持たない株主よりも、意思を持つ株主の方が企業にとって価値がある」
この言葉は、投資と経営の本質を突いている。果たして、意思なき株主によって企業の成長は促されるのだろうか?
インデックス(指数連動型)投資が引き起こすバタフライ効果
カオスとは混沌や無秩序を意味する。その理論の一つにバタフライ効果がある。「ブラジルの蝶が羽ばたくと、その小さな空気の動きが積み重なり、やがてテキサスで嵐を引き起こす」というものだ。インデックス投資もまた、蝶の羽ばたきのごとく、気づけば世界中に広がり、いまや市場全体に大きな影響を与える存在へと成長した(下図参照)。
図:パッシブ型の資産総額がアクティブ型を上回った
2024/4/19 付 日本経済新聞 朝刊より
インデックス投資の特徴は、例えば市場全体に投資することだ。個別企業を分析せず、その分析を担う高給なアナリストも必要ないため、投資家が支払う手数料を低く抑えることができる。これが初心者にとって魅力的な選択肢となっている。事実、近年の上昇相場の中で、多くの投資家がインデックス投資で利益を得ている。
しかし、この普及の背景には、見えずらい真実もある。もし企業の株主がインデックスファンドだった場合、その株主は企業の経営や成長に意思や興味を持っているのだろうか?答えはNoだ。市場全体を購入(投資)する仕組み上、個別企業への関心は薄い。意思なき投資が拡大しつつある現実を無視することはできない。
意思ある投資がもたらす成長
投資には、利益を追求するだけではなく、成長を後押しする力がある。ファンがスポーツ選手を応援し、その選手がより一層の高みを目指すように、意思を持つ投資家の存在は企業の挑戦を支える。教育もまた未来をつくる力強い投資だ。一つの支援が、人々の可能性を広げ、夢を現実に変える。そして育まれた知識と情熱が、新たな価値を生み、社会を豊かにする原動力となる。
一方、意思を持たない株主では企業を高みへと導くことは難しい。企業の成長には、投資家の応援と意思は力強い追い風だ。インデックス投資の合理性は確かに魅力的だが、その普及が引き起こす意思なき投資の拡大が、資本市場に嵐を巻き起こし、経済全体に大きな影響を及ぼす可能性を見過ごすべきではない。意思なく利益を追求するだけの投資は、結果的に逆の結果をもたらしかねない。これは投資家にとっても不都合な矛盾だ。
だからこそ、さわかみファンドは、強い意思をもって企業を選定し、長期的成長に寄り添い、ともに歩む投資を貫いている。それこそが投資される企業にとっても、財産形成を願う投資家にとっても、未来を切り開く合理的な選択だと信じているからだ。
2025年が始まった。未来をかたちづくる鍵は、どのような投資を選び、どのような意思を持つかにかかっている。今こそ私たちの選択が問われている。
【取締役副社長 熊谷 幹樹】