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人には色がある。この場合の色とは、性格のみならず年齢や性別などの違いも含む。色とは個性であり、状況もまた色と言えよう。

ピカピカのランドセルを背負う小学生に対してリスク管理の必要性を教え込むか?高所恐怖症の人に対してジェットコースターに乗るのを強要するか?杖を持った高齢者に対して次の駅までの猛ダッシュを求めるか?個性や状況は当たり前のように周囲が重んじるべきことだ。

新しい恋人を求める時、相手の性格や容姿、年収など選ぶ基準は人によって様々だ。自分に合う恋人を探すのがゴールだとすれば、結局は、自分自身の基準や価値観に従うのが理想だと思う。他人に参考を求めても押し付けられる義理はない。お見合いのようにお互いを学び、お互いに成長していくという工程もあろうが、そこにだって自分だけが持つ物差しがある。

「嘘をつくな」「人を傷つけるな」「モノを盗むな」といった、人としての大枠のルールはあってしかるべき。しかしながら、誰かが決めた基準通りの人になるよう社会から矯正(強制)されたら、すなわち人であることを失ってしまう。誰と付き合い、誰を仲間とするかは、選ぶ自分と選ばれる相手で決めればいい。

 

企業にも色がある

愛媛の地に土着した100年企業は経営者も4代目、古参社員もぞろぞろと引退をはじめている。高度経済成長期に合併して成ったハイテク企業はいま、インド人をトップにグローバルで売上を伸ばしている。渋谷のスタートアップ集合ビルで生まれた若い企業も、先日ようやく上場を果たしたところだ。さて、それら3つの企業を同じ価値観で見れるだろうか?

人に色があるのと同じく、法人たる企業にも色がある。経営者が方向性を定め、それに共感した社員たちと前へ前へと努力をし続けている。未来に希望を抱き、世界席巻に鼻息荒く、そして後世の憂いを消すべく…企業の視線やステージは違えども、一様に皆、企業として励んでいる。それなのに、なぜ投資家は個性やそれぞれの状況を配慮しないのだろうか?

気候変動対策しかり、グローバル会計しかり、女性役員比率しかり、株主還元策しかり。ステージの違う企業に一律の“上場企業としてあるべき姿”を求めるのはいかがなものか。無論、上場しているがゆえに守らなければならないルールや基準はある。だが、人と同じく企業だって十人十色。何を目指すか、どういう企業でいたいか、それぞれ意思を持っているはずだ。上場は資金調達の場であり、矯正の場ではない。

昨今はインデックスファンドやETFへの資金提供を投資と呼び、市場全体の最適化を推し進めることを是としている。そこに個性豊かな企業たちがたくさん存在していることを忘れているかのように。インデックスファンドが罪とは言えない。あれはあれで合理的なのだ。しかしあれは投資ではない。

 

企業はどのような投資家に株式を持ってもらいたいか、経営メッセージと会計の透明性をきちんとすべきだ。そして投資家は自分の目や感覚で企業を選ぶ。2025年は、市場ではなく“人”を育む投資をもっと追求しよう。そして“人”が生み出す新しい価値(リターン)を未来に期待できるような社会にしよう。

 

【2024.12.17記】代表取締役社長 澤上 龍

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