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「言葉の力で、一人でも多くの人に勇気と安らぎを届けたい。」
そのように願う碧魚まりさんの言葉は、未来を築く力そのものです。
この度、さわかみ投信が夢に向かって頑張る人を本気で応援する「#かなえたい夢プロジェクト」の一環として、まりさんに『長期投資だより』にて定期的にエッセイを連載していただけることとなりました。
小学校教員としての経験を持つ彼女が描く『日本の未来』とはどのようなものでしょうか。

まりさんの言葉たちが、皆さまの心に届き、未来を育んでくれることを願っております。

 


 

先日、久しぶりに「はじめてのおつかい」というテレビ番組を視聴した。この番組は幼い子どもが1人で初めての「おつかい」にチャレンジする様子をカメラマンが追いかけるという企画である。成功させようと健気にがんばる子どもたちの様子は微笑ましくも、可愛らしい。そして今回は、親の子どもへの関わり方に心が動かされてしまった。

 

番組に出演していたとある家族。母親の誕生日を祝うために、父親は女の子にケーキにたてるロウソク、ケーキ用プレート、そしてケーキをデコレーションするチョコペンの三品を買ってくるよう依頼した。しかしその子は棚に陳列された商品から、お仏壇用の小さなロウソクを買ってきてしまう。家で待っていた父親は、あらら…という表情で笑いながらもロウソクの種類には言及せず、そのまま「ありがとう」と受け取った。「これじゃないよ」と諭したり、間違いを訂正したりしないんだ、とここでわたしは一つ目の感心。無事に他の二品も購入することができ、ケーキには仏壇用の小さなロウソクをありったけ立てた女の子。ケーキの見た目がどうなろうと、好きにさせたのも素敵だなあと感心してしまった。ロウソクに火を灯すと、間隔が狭いため火は合体し、ケーキの上で尋常じゃないくらいに燃え盛っている。その様子を見て、笑っていたご両親はとても楽しそうで、無事任務を遂行し、感謝の言葉をもらった女の子も自信に溢れた何とも誇らしげな顔をしている。番組を見ていたわたしまで思わず笑顔になってしまった。

ケーキにたてるロウソクは、ケーキ用のものを使うこと。お誕生日のケーキに立てるロウソクは年の数。それらは「正解」であり「普通」でもあるが、考えてみれば取るに足らないことなのだ。「間違い」を間違いにせず、そのまま受け入れたその子の両親がすごく素敵だと感じた。もし子どもが、社会のルールからはみ出たり、誰かに迷惑を掛けたりするならば、親の定めとして正しい道へ導かねばならない。しかしそうではないのならば、今回のように幼いうちは、必ずしも大人の常識にのっとって「正しいこと」を教えなくても良いのかもしれない。あらゆる場面において、子どもが頭を使って考えた選択ならば、親が「正解」にするからこそ、のびのびと自分の選んだ道を歩めるのだろう。

近年、大ヒットした映画で「ありのままの姿」や「This is me」などと声高く歌われていたのは記憶に新しい。また、就活や生き方、働き方について述べられる際など多くの場面で「自分らしさ」という言葉が躍るようになった。いずれもその根底に、簡単に世間や他人に己を左右されまい、という意思を強く感じる。そういった風潮が世間で広く受け入れられるということは、たくさんの人が「自分自身を認めたい」という切実な願いを抱えていることの表れでもある。しかし自分で自分に花丸を付け、選んだ道を自信を持って歩めるのは、それまでの成功体験があってこそ。

先程の「はじめてのおつかい」の女の子のように、周りの信頼できる人に自分で選んだことを肯定される積み重ねによって、自分の選択に自信が持てる「自己肯定感」は育まれてゆく。自己肯定感と幼児期・児童期における周りとの関係性は切っても切れない繋がりがある。

しかしそれは子どもだけでなく、大人にも当てはまるのではと考えた。大人は、社会あるいは家庭に求められることをこなして当たり前とみなされる。子どもと違って何かをして褒められることは殆どないと言っていい。しかし大人だって、自分で進む道を選んでいるという自負があり、信頼のおける人にその道を認められることで、また新たな一歩を踏み出すエネルギーに変わってゆくのかもしれない。

 

番組の「親の姿勢」を見て、子どもに対してだけでなく、先輩として後輩と仕事をするときにも「任せて委ね、肯定する」ということの大切さに改めて気づいたのだった。

 

あおうお      

碧魚 まり

note というSNS でエッセイを書き始めて4 年。いつか文章を書くことも仕事にしたい小学校の先生。食べること、書くこと読むこと、ことばにまつわることが好きな1992年生まれ。

 


 

 

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