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昨年11月に投資先企業の酉島製作所のタイ拠点とシンガポール拠点にお邪魔しました。ポンプは発電所や製造工場に必要な産業機器です。水に恵まれない地域では海水から飲料水をつくるときに、そして河川等の治水や農地の灌がいにも使われます。脱炭素社会では液体水素や液体アンモニアが燃料となり、専用の新型ポンプが必要となります。ポンプは様々な場面で用いられる重要な社会インフラです。同社は100年以上にわたりこのポンプを製造してきた専業メーカーで、高い技術力を背景に国内はもとより世界で活躍しています。

 

タイ拠点とシンガポール拠点

タイ工場は首都バンコクから東南に150kmほど離れたラヨーン地方に、シンガポール拠点は空港から車で30分ほどの場所に位置します。各拠点とも主要業務は営業活動とメンテナンスです。お付き合いのある顧客は官公庁から民間企業まで幅広く、取り扱うポンプの種類や大きさも顧客の用途に応じて様々です。タイ国内では同社ポンプが8,000台も稼働しており、主力は発電所用ポンプとのことでした。シンガポールでは1,000台が稼働し、主力は海水の淡水化用ポンプだそうです。新規受注のポンプは大阪本社で製造されますが、案件獲得は現地で行います。獲得には競合ライバル社の動向や自社生産ラインの稼働状況など、採算を得るために多くの条件を勘案しなければならない難しさがうかがい知れました。

巨大部品の説明の様子

▲巨大部品の説明の様子

ポンプに使われる消耗部品のなかにはベアリングのように5年程度で劣化するものがあるため、定期的なメンテナンスが必要です。必然的に顧客とは長い付き合いになり、信頼関係の構築が重要になります。同社は他社製ポンプでも顧客の要請があれば、性能向上を含めた上で部品交換する取り組みも展開しています。これはREDU(Re-Engineering and Design Up)と呼ばれ、ポンプを知り尽くした同社だからこそできるサービスです。新規顧客との接点づくりと既存顧客の信頼強化に繋がっているのでしょう。

■ 酉島製作所海外拠点の様子

 

グローバル規模での事業拡大を目指して

今回お会いした方々は総勢7名で、そのうち日本人は3名でした(拠点長2名、技術者1名)。グローバル規模での事業拡大を目指す同社にとって、ローカルスタッフの育成は重要な任務です。コミュニケーション能力の高い方ばかりで、新規採用、本社研修、現地OJTを通じ優秀な人材が着実に育成されていると感じました。拠点長をはじめ会社全体が現地人材の育成に力点を置いている成果でしょう。またシンガポール拠点の配下には、マレーシアやベトナムの拠点があります。繁忙期は国をまたいで人材をやり繰りする機動的な人材戦略を採っているとのことでした。納期遵守の工夫であり、一定レベルの技術が社員の間で均等に浸透しているからできる取り組みだと思います。

 

企業の本質的な強み

ポンプ需要は新興国の経済発展や世界的な脱炭素需要の高まりを背景に、今後も世界レベルで力強く拡大すると見込んでいます。同社の活躍フィールドも更に広がるでしょう。成長する業界で競合他社に遅れを取らず発展する原動力は“人”だと思います。今回お会いした方々全員が技術への自信と仕事への誇りを持ち、顧客の利益を第一に考えながら一枚岩で将来に向かっていく逞しさを感じました。生き生きとした社員の姿や会社の雰囲気は有報などでは掴みにくいものですが、企業の本質的な強みであり、そこに触れることのできた貴重な経験でした。

【運用調査部 アナリスト】
小宮 力
前野 宏明
シャルル・サルヴァン

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