「こんなサービスがあったら、きっと便利になる」
「こんな製品があれば、私たちの生活はもっと豊かになる」
そんな思いから企業は生まれ、一歩を踏み出す。顧客の信頼を積み重ねながら、事業は成長する。
企業は単なる商品やサービスを提供するだけではない。雇用を生み出し、人々の生活を支え、社会を動かしていく。働く人々が収入を得て消費者となり、新たな需要が生まれる。その需要が次の事業を生み、経済は循環する。この流れこそが、経済成長の原動力だ。そして、成長の暁に、企業が選ぶ道の一つが「上場」だ。
上場を果たすことで、企業は新たなステージへ進む。しかしその瞬間、企業は摩訶不思議な世界へと足を踏み入れる。企業は「銘柄」となり、証券コードが付与される。経営者や現場の情熱は「株価」という数字に置き換えられる。確かに、株価は企業の価値や市場の期待を示す指標のひとつだ。だが、企業の本質はそこにはない。
いつだって、企業を動かしているのは、日々の努力と挑戦を続ける人々の情熱だ。
これから、より身近になる株式市場
日本では長らく「投資は一部の富裕層のもの」と考えられてきた。高度経済成長期には、安定した雇用と終身年金制度があり、多くの人にとって投資は必要不可欠ではなかった。
しかし、時代は変わった。
財政難と高齢化で社会保障の限界——もはや「国に任せていれば大丈夫」ではない。
一人ひとりが未来を見据え、自らの資産を守り、育てる時代が来ている。政府もそれを後押ししている。iDeCoや新NISAが導入され、個人の資産形成を支援する仕組みが整いつつある。
1,100兆円もの個人金融資産が預貯金として眠る日本。かつて鉄のように固まり、動かなかったこの資産が、少しずつ市場へと流れ始めている。企業の成長を支え、個人の未来を守るために、投資はかつてないほど重要になっている。
だが誤解してはならない。投資とは「お金を増やすこと」だけではない。
未来を買うということ
スマホ一つで世界はつながり、どこにいてもリアルタイムで情報を共有できる時代になった。AIが言語の壁を越え、誰もが自由に対話できる未来が、すぐそこにある。医療技術の進歩により、新たな治療が生まれ、命が救われる可能性が広がっている。
これらはすべて、かつて起業家やリーダーたちが未来に賭け、挑戦を選択し、それをともに歩んだ投資家や消費者、技術者、働く人々がいたからこそ実現した。未来に価値を見出し、それぞれの立場で関わり続けたからこそ、今の世界がつくられた。
だからこそ問いたい。
あなたは、投資家として、お金にどう働いてもらい、どんな未来を買いたいのか? さわかみ投信は、銘柄や株価に投資しない。投資するのは、いつだって株価ではなく、企業であり、その先にある「人の情熱」だ。
日本はまだ終わっていない
「海外の市場のほうが成長している」
「投資をするならアメリカ、ヨーロッパ、新興国だ」
そんな声が大きくなっている。確かに、海外には成長市場がある。だが、それだけか?
日本にも、まだ挑戦し続ける企業がある。変化を恐れず、成長を諦めない人たちがいる。地方の工場から世界へ挑戦する製造業。新しい価値を生み出すテクノロジー企業。地域資源を活かし、独自のブランドを築く企業。あなたが働くその町にも、未来を変える企業がある。都心でも、地方でも、それがどこであろうと——。日本には、まだ未来をつくる力がある。
その火を消してはならない。
日本企業は、まだ終わらない。
【取締役副社長 熊谷 幹樹】