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かつて、鹿児島県屋久島でリサイクルの仕事をしていました。屋久杉の森に入ると、地面にはまるでビロードのようにコケが生えています。屋久島は花崗岩の島で、本来の土壌は豊穣ではなかったらしい。岩の表面に生えたコケが、有機酸を出して岩を溶かし、その中のリンやカリウムを吸収して成長します。そして、吸収されなかった岩石の残りやコケを含めた植物の死骸の分解物(腐植)が現在の土壌となり屋久杉の根を支えています。太古から生き延びてきたコケの進化に詳しい研究者との対話は刺激的です。根本的に、現代に生き延びているコケは生物学的に非常に強いのです。コケは背が低い→周りはのっぽの高等植物→光合成の光を取られる→生き延びるには?→普通の植物が繁殖できない環境で生きる逞しさへの進化。結果として、低光量、乾燥、凍結、塩分、放射線、重金属汚染などの特殊環境への耐性が高い植物になりました。気候変動による砂漠化の問題はすでに知られたところ。そこに複合的に塩害も重なって土壌の劣化が進んでいます。そんな過酷な環境での緑の修復にコケの活用が可能です。時代の流れから推察すると次は宇宙での植生でしょう。コケの生き残りの知恵はあなどれません。

【取締役最高投資責任者 黒島 光昭】

 

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